BLUE CROW

二次創作非公式小説サイト。

無理矢理飲まされた苦い汁が喉を落ちていく。口の端からはだらしなく粘った白色が顎を伝い、このところ形があらわれてきた喉仏から鎖骨へと垂れた。練造はいちいち尸良の味を意識することはない。練造は尸良しか知らないのだ。優しく愛撫されることも、ゆっくりと口付けされることも知らない。それは好きな女にしてやるか、あるいはしてもらうものだと思っていたのに、現実はと言うと罵声を浴びせられ、髪を強くつかまれては無理矢理に奥まで突っ込まれる。両方の手を無くした尸良には練造に指を挿し込んで慣らすこともできない。ろくに慣らしていないそこに不釣合いな熱量が押し入っては体の中で暴れ弾ける。

「おい貴様!隣の者から苦情が来ておるぞ。……もう少し静かにせんか」
見張りの呈した苦言はもっともだったが、そもそも尸良の世話に練造を宛てがわせたのは英だ。ご丁寧に女と男、1人ずつ「好きな方を選べ」とまでの心遣いに応じているのに文句をつけられるとは心外である。否、心外だと思うと同時に「尤もだな」とも思っていたがおくびにも出さなかった。
「あァン?てめェ隣の奴に言っとけよ。毎晩毎晩呻いてンのはそっちだろうが!ッてよ。喘ぎ声ぐらい感謝してもらってもいいくらいだぜ…。なァ……てめェもこのガキ、ネタにしてんだろォ?ゲッハハハハッ!」
下品な笑い声が、尸良と繋がったままの頭の中に響いて、練造は一層気持ち悪くなる。見張りは「ほどほどにしろ」と苦々しく吐き捨てて立ち去った。誰にも助けなど求めていないはずの練造だったが、視界から消え去ると更に不安になっている自分に気づく。早く終わって欲しい。早く解放されたい。練造は無意識に目を閉じていた。

「オイ!寝てンじゃねェよ!……練造、もっと声出していいぜ。聞かせてやれよ」
言葉の意味を探るように尸良の顔をじっと見る練造は理解と同時に唇を尖らせてぷいっと横を向く。そんな予想通りの反応を見て尸良はゲッハハハハッと一段と大きく笑うのだ。

「そうやっていられンのも今のうちだなァ?せいぜい強がっとけ」
言うやいなや抜けそうになるギリギリまで腰を引き、一気に奥まで落とし込む。身体と身体がぶつかる音をかき消すかのように、声変わりの始まりかけた大人とも子供ともつかない練造の声が艶かしく、あたりの牢に響いた。



尸良は食事や着替えもひとりではままならないにも関わらず、ひとりの人間を意のままにできることに強く快感を得ていた。それも男だ。女ならば組み敷いて好きにすることは簡単だが、子供とはいえ、意思を持った男である練造を犯すのはひどく気持ちが良かった。身体が気持ちいいのではなく、征服欲だとか、支配欲だとかそういうものが満たされた。
が、なにかが満たされない。肌の感覚がないことで性欲が満たされていないのかと思い、何度も何度も抱いてみたが、枯れ果てるまで犯し続けても何も変わらない。以前は天下の往来だろうが女引ん剥いていた尸良自身も、「他人に見せびらかしたい気持ちでもあるのかもしれない」と必要以上に練造の声をあたりに響かせてみたが、得たものは見張りのなんとも言い難い表情だけだ。隣から聞こえる反応はもはや人間のそれではない。
ならば挿れながら胸を突こうかと一瞬だけ思ったがそれはしなかった。仮に挿れながら突いて肉が己を締め付けようとも今の尸良にとっては何一つ気持ちよくないのだ。残るのは練造の死体と満たされない自分の心だと分かっていながら突き立てる気にはなれなかった。

尸良が「それ」を分かりかけた頃は、2人は城の牢を出て、廃墟で暮らしていた。見張りもいない。誰も自分たちを知らない。
尸良には「それ」を言葉で伝えること、ましてやその先などは到底望めない。いつまでも降り止まない秋の雨で練造の身体は冷え切っている。暖めるような気持ちで抱きしめてその顔をのぞきこんでも、冷たい雨のような雫で練造の睫毛は濡れ細っているのだった。

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